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6こころとからだのしくみ 1129

6こころとからだのしくみ

8 移動関係
(1)移動の意義と目的
人が食事、排泄、更衣、入浴などの日常生活動作を行う際に、移動することなくこれらの行為を行うことはできません。
また、移動可能な範囲が広く自立しているほど、生活範囲が広がり、より豊かな生活を送ることができます。
介護従事者は、利用者が安全でできるだけ楽に移動できるよう支援することが大切です。
人がベッド上で動かずにいると、筋力は1週間で10~15%、1か月で50%ほど減少します。身体活動や精神活動を行わないことによる廃用症候群を予防し、寝たきりにさせないような支援が必要です。
移動などの生活行為の自立を促すためには、身体機能だけに着目するのではなく、移動しやすい環境、意欲や安心感などの心理的な側面も重要です。

(2)体位について
移動の介護では、利用者の体位が大きく影響します。ここでは、体位の種類と意味を理解しておきましょう。
・立位
立っている姿勢 ・椅座位  椅子に腰かけた姿勢 ・端座位  背中をもたれずに、ベッドの端などに腰かけた姿勢
・半座位
上半身を45度に起こした姿勢、ファーラー位ともいう(セミファーラー位は15~30度起こした姿勢)
・長座位
ベッド上などで足を伸ばして座った姿勢
・起座位
机の上にクッションなどを置き、それを抱えるようにうつ伏せにする姿勢  心疾患や喘息発作の場合に、血液循環の負担を軽減し、呼吸を楽にする姿勢
・仰臥位
仰向けに寝た姿勢
・側臥位
左右のどちらかを下にして横向きに寝ている姿勢
・腹臥位  うつ伏せに寝ている姿勢

(3)移動に関する利用者のアセスメント
移動の介護を行うためには、利用者がどのような状態にあるか、課題や支援方法についてアセスメントします。
ICFの視点に立って、移動という生活機能の中の「活動」に対し、他の生活機能や「健康状態」、「環境因子」「個人因子」がどのように相互作用を及ぼしているかをアセスメントします。
麻痺の種類には、以下のようなものがあります。

・四肢麻痺
左右の上下肢に麻痺が生じるもの。主な原因疾患は、頸髄損傷、脳性麻痺がある。
・対麻痺
両上肢、または両下肢の麻痺をいう。通常は腰髄損傷等による両下肢麻痺をいう。
・片麻痺
右または左の半身に麻痺が生じるもの。主な原因疾患は脳血管疾患がある。
・その他
四肢のうち1つが麻痺を起している単麻痺、四肢のうち3つが麻痺を起こしている三肢麻痺がある。

人間の身体の関節は、一定の範囲内(関節可動域)で動かすことができますが、無理な動きをすると、関節を外したり、骨折することもあります。
関節の動きが悪くなった場合、日常生活動作に支障の少ない手足の位置や関節の角度をとる姿勢のことを「良肢位」といいます。移動・移乗に関するアセスメントにおいても、良肢位を確認することが大切です。

(4)安全で気兼ねなく動けることを支える介護
安全に移動・移乗を行うためには、利用者・介護者の両方にとって安全で安楽な方法であることが必要です。
そのためには、利用者の身体の各部分の自然な動きや使い方を理解し、運動力学を応用して合理的な方法で介護を行います。その際、利用者の身体状況に応じて、残存機能を活かしてできるだけ自立できるよう支援することが大切です。
ボディメカニクスを活用した介助の方法は、介護者の腰痛防止に有効であるとともに、利用者にとっても安全で楽な方法となります。
外出の支援をする際は、介護従事者が外出をスムーズに行える方法を知ることによって、利用者が気兼ねなく外出できるように支援します。
そのためには、交通量が少ない、段差が少ないなど移動に支障のない道を選び、トイレやエレベーターなどの設備を確認し、必要に応じて他人の手を借りるなどがポイントになります。

(5)安全で的確な移動・移乗の介護の技法1
●歩行の介助
歩行の介助を行う際のポイントは以下のとおりです。
・介護従事者は、歩行パターンの特徴を把握して、利用者の斜め後ろに立ち、利用者のペースに合わせて歩行し、ふらつきや転倒に対応します。
・杖歩行をする場合は、健側の手で杖を持ち、杖→患側→健側、または杖と患側を同時に出す→健側の順で歩行します。介護従事者は患側の斜め後ろに立って介助します。
・階段の昇降をする場合、昇りは 杖→健側→患側、下りは 杖→患側→健側の順になります。
・障害物をまたいで超える場合は、まず杖を障害物の先に出し、患側で障害物をまたぎ、次に健側を出して患側の足に揃えます。
・階段を昇る場合だけ、健側が先になり、その他は患側が先です。これだけ覚えておけばほとんど大丈夫です。
・杖の長さは、床から大転子部までの長さで、杖をついた時の肘関節の角度が150度前後になる長さのものを使用します。杖先のゴムが減っていないかにも注意します。

●車いすの介助
車いすは、歩行が困難な人の移動手段として使用しますが、さまざまな生活場面で使用する福祉用具ですので、本人の身体に合った車いすを選ぶことが必要です。
利用者の身体に合わない車いすを使用すると、姿勢が悪くなり褥瘡の原因にもなります。股関節、膝関節、足関節がそれぞれ90度になる車いすが適しています。
車いすの座面や背もたれの高さや角度などを、利用者の身体の状態に合わせて調整することをシーティングといいます。
車いすでの移動介助のポイントは以下の通りです。
・砂利敷きの場所を通るときは、車いすのキャスター(前輪)を上げる。
砂利やぬかるみなど、通路面の整備が悪い場所では、ティッピングバーを踏みキャスターを上げて通行します。
・段差では、段差の手前でキャスターを上げ、前輪が段差に載ったら前進して後輪を載せる。
・下り坂では、後ろむきで、介護従事者が身体全体で支えながら、ゆっくりと降りる。
・電車に乗るときは、段差と同様の方法で、電車に対して直角で前向きに乗車する。
・エスカレーターでは、上りは前向き、下りは後ろ向きでキャスターを上げて乗り、すぐに動けるようにブレーキはかけない。
・車いすを止めるときは、必ずブレーキをかける。
ベッドから車いすへ移乗するときは、ベッドを車いすの座面と同じ高さに調節し、ベッドの側面に対し、15~30度の角度に車いすを置きます。片麻痺がある場合は、利用者の健側に設置します。

(5)安全で的確な移動・移乗の介護の技法2
●移乗の介助
ベッドから車いす、車いすから自動車など、移乗の介助を行う際には、利用者・介護従事者の両方にとって、負担が少なく安全である必要があります。そのためには、ボディメカニクスを活用することが重要です。
ボディメカニクスを活用した移乗の介護では、支持基底面を広くとり、重心が基底面の中に入るようにします。 支持基底面とは、両足で立った場合の左右の足とその間の面のことです。つまり足を拡げれば指示基底面は広くなりますし、足をそろえれば指示基底面は狭くなります。
指示基底面を広くとり重心を低くすると、安定して利用者を支えることができます。
これとは逆に利用者が立ち上がる場合は、指示基底面を小さくし、前かがみになって重心を指示基底面の外に出してもらいます。このようにすると、動きがスムーズになり、立ち上がりやすくなります。
利用者が片麻痺の場合は、健側を活用できるよう、車いすを20~30度の角度で健側につけ、介護従事者は麻痺側を支え、保護します。 車いすからベッドに移乗する場合は、ベッドが健側になるように近づきます(健側接近)。
乗るときと降りるときでは逆になりますので注意しましょう。
全介助の場合は、利用者の足の間に介護者の片足を入れ、身体全体を抱えるようにして移乗します。

ボディメカニクスの要点をまとめると以下のようになります。
・支持基底面積を広くする
介護従事者の足を前後・左右に広くとることで安定する
・重心を低くする
膝を曲げて腰を落とすことで安定する
・利用者にできる限り接近する
接近することで重心が近づき容易に介護できる
・水平に移動する
利用者を持ち上げるのではなく、横に水平移動することで負担が軽減する
・てこの原理を使う
肘や膝を支点にして、てこの原理を使うことで負担が軽減する
・身体を小さくまとめる
利用者が両手両足を組みできるだけ小さくまとめることによって、摩擦が減り移動しやすくなる
・大きな筋群を使う
腕や手先の力だけを使うのではなく、大きな筋肉を使うことで大きな力が出せ効率的である

●ベッド上での体位
ギャッジベッドの背上げ機能を利用して座位をとるためには、先に足上げ機能を使用して膝を上げてから背上げ機能を使って上体を起こし、膝の下や両脇にクッションなどを入れることで、ずり落ちせずに安定した座位をとることができます。
自分で身体を動かすことが困難な利用者には、安楽な体位を保つことで、身体的なくつろぎや、精神的な安定を得ることができます。
安楽な体位を保つためには、指示基底面を広くし体圧を分散させる、四肢は自然な湾曲が保てるようにする、身体とベッドの間にクッションを入れる、などを行います。
仰臥位での褥瘡の好発部位は、仙骨部、肩甲部、後頭部、後肘部、踵部などです。
側臥位では、大転子部、腸骨部、肩関節部、膝関節部、耳介部、踵部など、
座位では、坐骨部、仙骨部、尾骨部、肩甲部、後頭部などです。

褥瘡は、同一部位への長時間の圧迫や摩擦による血流循環障害や低栄養、尿失禁などによる皮膚の湿潤が発生原因となります。
はじめに皮膚の発赤が起こり、水泡やびらんへと進み、皮膚・皮下組織の壊死、潰瘍と進行していきます。

予防のためには、以下のような方法があげられます。
①最低2時間ごとに体位交換をする(90°側臥位は避け、30°程度にする)
②座位では、床面に足がしっかりとつき、90°座位が保てるようにする
③寝衣・寝具の湿潤を避けて、身体・寝衣・寝具を清潔に保つ
④シーツ・寝衣のしわを作らない、のりづけしない
⑤摩擦を防ぐ
⑥たんぱく質・ビタミンの多い食事を摂り、栄養状態を維持する

(6)利用者の状態・状況に応じた移動の介助の留意点
●片麻痺のある人の移動の介助
利用者に片麻痺がある場合、多くの人は、健側の機能は障害を受けていませんので、全面的に介助するのではなく、健側の機能を活用し、介護従事者は麻痺側を補助するように介助します。 一部介助の場合は、麻痺側に立って麻痺側を支え、保護しながら介助します。
片麻痺のある人で、尖足や下垂足などでつま先が上がらず、歩行が困難な人には短下肢装具がよく用いられます。
短下肢装具は、下腿部から足部までの構造になっていて、足関節の動きを制限し尖足にならずに歩きやすくする装具です。

●視覚機能が低下している人の移動の介助
視覚障害者は、聴覚や触覚を用いて日常生活動作を行っています。
介護従事者は、利用者の聴覚・触覚に情報を与え、周囲の状況がわかるように支援します。

視覚障害者が安全に移動できるためには、居住環境の整備が必要です。
段差の解消や手すり、すべり止めの設置、移動する場所に物を置かないなど、整理整頓しておくことも重要です。

視覚障害者の手引き歩行はガイドヘルプと呼ばれています。ガイドヘルプは以下の手順で行います。
①介護従事者は、利用者が白杖(はくじょう:視覚障碍者の歩行補助具で、杖先で障害物を確認しながら歩行する)を持っていない方の側で、利用者の半歩手前に立つ。
②歩行を始める合図として、介護従事者は声をかけながらした手の甲で利用者の手の甲に触れる。
③歩行時は、利用者に介護従事者の肘の少し上を握ってもらい、半歩手前を歩く。
④介護従事者は、利用者のペースに合わせて状況説明をしながら歩行する。
⑤曲がり角では、いったん立ち止まり、行く方向を説明してから方向を変える。
⑥階段を昇降する際は、手前で階段に対して直角に止まり、状況を説明。利用者の足先が階段に触れたのを確認してからゆっくりと上り下りする。
⑦椅子へ誘導する際は、利用者の手を椅子の背もたれや肘掛などに触れさせる。利用者は自分で椅子の状態を確認してから座る。

問題はすべて正解・解説は省略
1 関節拘縮は長期の寝たきり生活などで関節が固まり、動かなくなることを指す。
2 関節可動域(Range Of Motion、ROM)は関節異常を発見するための検査法である。
3 良肢位は日常生活で支障の少ない関節角度を持った肢位を指す。
4 橈骨末端骨折は手をついて転倒したときに起こりやすい。
5 高齢者によく見られる骨折には上腕骨頸部骨折、橈骨遠位端骨折、大腿骨頸部骨折、脊椎圧迫骨折などがある。
6 高齢者がつまづいて転倒し、大腿骨頸部骨折などの可能性がある場合、介護者は痛みの少ない姿勢で患者を寝かせ、医師の指示を待つ。
7 高齢者が転倒し、介護者は打たれた部位を確認し、自覚症状や出血などを観察する。
8 寝たきりになると尿路感染、起立性低血圧、足のむくみなどの合併症のリスクが高まる。
9 長期の臥床により、関節の拘縮が生じ、痛みが増えるため、悪循環が生じる可能性がある。
10 寝たきりから回復させるために足底を床につけた端座位を維持することが効果的で、メリハリのある生活を心がけることが大切。
11 寝たきりの人は脳への刺激が少なくなり、思考力が衰える傾向がある。体位を変え、視界を広げることが重要で、褥瘡や肺炎の予防にもなる。
12 寝たきりになると消化や吸収の機能が低下し、便秘が起こりやすくなる。
13 寝たままの排泄が尿路感染を引き起こしやすくなるため、介護者は注意が必要であり、水分摂取が有効な対策とされる。
14 寝たきり高齢者は無気力な状態やうつ的な状態となり、睡眠障害を引き起こす可能性がある。
15 廃用症候群(生活不活発病)は長期の安静状態による心身の低下を指し、さまざまな合併症を含む。
16 廃用症候群を防ぐには、早期のリハビリテーション、臥床時間の短縮、適切な運動、環境の改善が必要。
17 廃用性症候群は治療を必要とする疾患により安静臥床を余儀なくされ、運動不足や長時間の安静により生じる。
18 筋委縮性側索硬化症は筋肉の動きを制約し、筋肉が減少する病気である。
19 脊柱管狭窄症は足のしびれや痛みを引き起こす間欠跛行と呼ばれる歩行障害を引き起こす。
20 変形性膝関節症は中高年の人によく見られ、膝の関節軟骨のすり減りに伴う痛みが特徴的である。

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